こばとの英語ノート

 言葉の妖精こばとの変てこな日常生活を英語を織り交ぜながら綴っています。こばと英語辞典も製作中。いつかは英語の総合サイトだって威張れるようになりたいな。何はともあれ、『こばとの英語ノート』をよろしくね!

最終話「人生の選択」

≪ 後日談②「計画には資金が必要です」

最終話「人生の選択」

「仕事も終わったよー♪ ご飯も食べて、お風呂も入ったよー♪ ついでに歯も磨いたよー♪」
 というわけで、いつものように軽く『こばとちゃん体操』をしてから、屋根裏で寝転がってタブレットでメールの続きを読みました。

「数馬は自分のシステムをウイルスと呼ばれることをひどく嫌っていました。私にはウイルスについてそれほど知識があるわけではありませんが、説明を聞くと、確かに数馬の "電子部隊" は従来のウイルスとはかなり違っているように思えます。むしろ "人工知能" の概念に近いと思います。数馬はこんなふうに説明していました。
『ほんの少しずつではあるけれど兵士たちは異なる遺伝子(プログラム構造)をもっている。ある種のセキュリティに対して完全に無防備にならないためだ。そして部隊長たちにはある程度の自由を与える。それぞれが判断して、小さな破壊活動や情報収集などを行うこともできる。ただし作戦の大枠を決め、全体を統率するのはあくまで司令官だ。司令官は本陣(こちら側のサーバー)に置いておく。部隊は撤退するときに絶対にファイルを残さない。残すとコードを解析されるからね。そこに居た痕跡は確実に消して、次の場所へ "移動" させる』」

「『日本史学研究室』には先鋒部隊が入りました。そこを拠点に阿縣研のセキュリティの弱点などを探って、その情報を本陣に送り続けていました。ランサムウェアのようにデータを暗号化して古文書を要求したのは、ある種の陽動作戦です。もちろん古文書を手に入れるという目的もありましたが、その成否については、数馬はあまり頓着していませんでした」

「私は指定場所の宅配ボックスから古文書を回収すると、それを自宅に郵送しました(こばとちゃんには見事に騙されましたね。私に古文書の真贋などわかるはずもないですけど)。数馬は古文書を手に入れると、五十木に1千万円を要求しました。驚いたことに五十木は即座に要求した金額を振り込んできました。数馬は『史学研究室』と『あとりえこばと』から先鋒部隊を撤退させ、本隊と合流させて阿縣研に侵攻させました」

「数馬はこの段階で勝利を確信していました。要求が拒絶されれば "最終兵器" 投入も辞さない構えでした。でも私は数馬の最終兵器に関する説明を聞くと、心の中に疑念が生じ始めたのです」

「『これだけは正直あまり使いたくない。自分でも制御する自信がない。というより "制御" とは正反対の概念で作られたものだ。そういう意味でこれは紛れもなく "ウイルス" と言える』
 最終兵器は自発的変異型プログラムです。少しずつランダムにコードを書き換えた自分のコピーを作り続けます。新たに生み出されたウイルスの多くはただのガラクタですが、時々、新しい環境に適応して生き残る "突然変異" が産まれる可能性があります。こんなものがどこかにばら撒かれたら、最悪の場合、世界中のコンピュータに際限なく広がって増殖してしまうかもしれません。私はこれを聞いたとき、初めて数馬のやっていることが怖くなって、思わず
『本当にそんなことをするの?』
と尋ねました。
『相手が要求を呑まなければ致し方ない。だがもちろんその前にこのウイルスの威力は警告する。相手にまともな判断力があれば要求を呑むだろう』
 ああ、この人は、いざとなれば何でもするんだなと初めて分かりました。それでも数馬を想う気持ちは変わりなく、私は罪悪感と恋心の間で板挟みになりました」

「千明さんからの手紙が届いたときは涙が止まりませんでした。私は千明さんを裏切ったのに、千明さんは私を責めるどころか、こんなにも心配してくれている。その一瞬だけ『数馬と別れようか』という思いが頭をよぎりました。でもダメでした。やっぱり数馬への想いは捨てられない。私は散々悩んで1つの結論を下しました。一生、数馬について行こう。そして私が数馬の暴走を止めてあげようって。そんなことすれば、いずれ数馬に捨てられるかもしれないけど、それでも、しがみついてでも彼について行こうって思ったんです。馬鹿ですよね、私。自分でも本当に馬鹿だって思うんです。数馬1人のために友達や先生裏切って、千明さん裏切って。結局、私の周りには数馬以外誰も残らなかった。本当にどうしようもない女だなって、自分でもわかっているんです」

 暦ちゃんは大粒の涙をこぼしていました。
 正直言って、彼女が自分の人生を棒に振ってまで、あの目面上君について行こうとする気持ちは理解できませんでした。だから私はなんと答えてよいかわからず、ただ「何かあったら、いつでも相談に乗るから」としか言えなかったのです。

 長いメールを読み終えてから、こばとは大学時代のマリちゃんと引間隆士のことを思い出していました。マリちゃんは赤桶さんとは正反対の決断をして幸せを手にしています。マリちゃんは、やっぱり頭が良くて、人生ここ一番て時にベストな選択をしてきたような気がします。以前にそんな話になったとき、本人は「『あとりえこばと』に就職したから、思いきり失敗してる」なんてことを言っていましたけど、きっと照れているんですねー。

 でも、こばとは赤桶さんの決断を非難する気にはなれませんでした。
 赤桶さんにも幸せになってほしいなと思いました。

 遅くなったので、そろそろ寝ますね。皆さん、おやすみなさい。
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 [ 2017/07/05 21:42 ]  こばとの大作戦! | TB(-) | コメント(0)
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