こばとの英語ノート

 言葉の妖精こばとの変てこな日常生活を英語を織り交ぜながら綴っています。こばと英語辞典も製作中。いつかは英語の総合サイトだって威張れるようになりたいな。何はともあれ、『こばとの英語ノート』をよろしくね!

地位と名誉とお金を失いました

≪ 第26話「覚悟」

第27話「地位と名誉とお金を失いました」

 かつての面影もないほどに、痩せ細っていましたが、そこに立っていたのは紛れもなく五十木でした。誰もが何と声をかけてよいかわからずに、しばらく呆然と彼の姿を眺めていました。
「どういうつもりなの?」
 小夜子さんが沈黙を破ります。
「目面上は怪物だ。生半可な手段では勝てんぞ。戦うなら刺し違える覚悟でやるんだな」
 五十木は小夜子さんを睨みつけながら言います。
「五十木君は目面上の仲間だったんじゃないのかね?」
 古垣内教授は労わるような口調で尋ねると、五十木は疲れ切ったように空いている椅子に腰を下ろし、これまでの経緯を話し始めます。

「確かに最初に目面上に接触したのは私のほうだ。やつの技術と恨みの感情を利用して、大学から古文書を奪ってやろうと計画を提案したのも私だ。その代わりに、やつに当面の生活費を提供した。私の隠れ家の一室に住まわせてやるとも言ったんだが、あいつは慎重で、アジトは共有しないほうがいいと断りおった」
「それじゃあ、目面上君の住んでいる場所も知らなかったんですか?」
 こばとがそう尋ねると、
「ああ。だが、あいつは古文書を手に入れると、それを引き渡す条件として1千万円を要求してきた」
「い、いっせんまんえん!?」
 こばとは仰天して叫んでしまいました。
「だが、あの古文書には1千万円以上の価値がある。あいつはそれを知らんのだと思うとむしろ愉快な気分になって全額支払ったよ」
「でもニセモノでしたねー。悲惨ですねー」
 こばとが他人事みたいに言うと、
「そうだ! おまえの策略だろう! くだらんことしおって!」
 五十木は椅子から立ち上がってこばとに掴みかかろうとする勢いだったので、こばとは「ひゃああ!」と叫んで逃げました。古垣内教授が五十木の肩に手を置いて落ち着かせると、何度か深呼吸してから話を続けます。
「あんな紙くず同然のものが届いて、私は激怒してやつに何度もメールしたが、何の応答もない。それ以降、やつとは全く連絡がとれない」
「目面上君は最初から騙すつもりはなかったんだと思いますよ。彼も古文書がニセモノであることは知らなかったでしょうから」
 こばとは慰めるつもりでそう言いましたが、「ぎろり」と睨まれただけでした。
「おかげで、私はもう一文無しだ。ははは。地位も名誉も金もないわい!」
 五十木は自虐的に笑いました。

 He lost a position, an honor, and money.
 彼は地位も名誉もお金もなくしました。


「とにかく、あの目面上だけは許せん!
 この五十木をこけにしおって! せめて一矢報いてやるぞ!」
「自業自得だけどね。その執念深さだけは失われていませんね」
 こばとは「やれやれ」と頭を振りました。
「我々が警察に被害届を出せば、五十木君も共犯として罪は免れないぞ」
 古垣内教授が悲しそうに言うと、
「かまうもんか! やつと刺し違えてやるわい! そうそう、ついさっき、目面上のやつに『今から K 大の連中と手を組むことにした』とメールしておいたからな」
 五十木はそう言って「ぐははは」と笑います。
「五十木君、君はどこまで呆れ果てた人間なんだ!」
 別府込助教授が五十木を指差して非難します。

 五十木は、このまま大学が手をこまねいているのなら、自分が1千万円を騙し取られたことを詐欺罪で刑事告訴すると言っています。そうなると目面上君はそれを大学側の攻撃だと判断して最後の切り札を使ってくるでしょう。

「これほどの大事を私の一存だけで決めるわけにはいかない。明日の午前中に緊急会議を開いて、そこで結論を出すことにする」
 雛田谷学長が疲れ切った口調でそう言いました。
「会議だなどと、そんな悠長なこと言っとる場合か! あんたが学長なんだから、あんたの権限で決めれば済むことだ!」
 五十木はそう叫びますが、古垣内教授になだめられて、今日のところは引き下がってもらいました。

「いえ、あのねー! 明日は月曜日で会社があるので、こばとも、できれば今日中に『ハッピーエンド』で終わらせてほしいのねー!」
 こばとはそう主張したけど、誰にも相手にされませんでした。

 ≫ 番外編④「英語でトンカツ食べましょう」
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 [ 2017/07/02 17:46 ]  こばとの大作戦! | TB(-) | コメント(0)
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