こばとの英語ノート

 言葉の妖精こばとの変てこな日常生活を英語を織り交ぜながら綴っています。こばと英語辞典も製作中。いつかは英語の総合サイトだって威張れるようになりたいな。何はともあれ、『こばとの英語ノート』をよろしくね!

パワーゲーム!

≪ 第24話「目面上君の要求」

第25話「パワーゲーム!」

 まず最初に今日の英文です。

 We'll play a power game with Memogami.
 目面上君とのパワーゲームに持ち込みます。


 power game とは大国同士が互いの力を背景にして政治的主導権を握ろうとする国際政治上の駆け引きのことです。小夜子さんが具体的な例をあげているので、読んでくださいなー。

「 1962 年。旧ソヴィエト連邦は、キューバに中距離ミサイル基地を建設し始めました。アメリカ合衆国の首都ワシントンを核の射程に収めて軍事的優位を確保しようとする危険な行動です」
 日曜日の朝、日本史学研究室で、小夜子さんがホワイトボードを使って冷戦時代の一大事件について講義をしていました。
「米ソの緊張は一気に高まり、世界は核戦争の危機に直面します。当時の合衆国大統領はあの J.F.ケネディ。ソ連の挑発行動に対し、彼は現代でもゲーム理論の教科書に載るような見事な決断をします」
 小夜子さんは、そこでひと呼吸置いてからこう言いました。
「ケネディ大統領は『ミサイルを撤去しないのであれば、米軍がキューバに侵攻して力ずくで排除することになる。全面核戦争もやむなし』と宣言しました」
 研究室が水を打ったように静まり返ります。
「つまり『ここで譲歩するぐらいなら、双方ともに破滅することを選ぶ』と宣言したのです。先に自らの退路を断つメッセージは、相手に対して強力な抑止力を発揮します。結果としてソ連の指導者フルシチョフはミサイル基地を撤去するという現実的な選択をすることになりました。もちろんアメリカ側も、トルコに配備されていた NATO 軍のミサイルを撤去して相手の面子を立てるという小さな譲歩はしたけれど」

 小夜子さんはそこで深呼吸してから、また言葉を続けます。
「目面上君にメッセージを送りましょう。『今すぐ阿縣研から手を引かなければ、警察に通報する。それで大学のコンピュータが全てやられても、それはそれで仕方ない。我々は多くのものを失うが、そちらも拘束されて人生を終了することになる』とね」
 小夜子さんはペンを置いて、雛田谷(ひなたや)学長をちらりと見ます。
「こちらの犠牲があまりに大きすぎる」
 学長は困惑して頭を振ります。
「双方に犠牲を出さないための策です」
「彼が『別に逮捕されても構わない』という態度に出たらどうする?」
 助手の名鷲さんが尋ねます。
「『警察に通報すれば総攻撃する』と警告してきたということは、彼は逮捕されることを怖れているはずです。警察に追われながらの逃亡生活も望んでいないでしょう。おそらく彼は退きます。目面上君は頭が良いですから、自分にとって損になる選択はしないはずです。というより、この取引で彼が失うものはほとんどありません」
「じゃあ、あいつは無罪放免というわけか!? あれだけのことをしでかしておいて!?」
 阿縣研から来ている小豆野(あずきの)という院生さん(目面上君について色々な情報をくれた人です)が納得できないというように叫びます。
「彼の描いていた(新学科設置という)構想も実現しません。これだけの労力を割いて得るものが何もなかった、というのは向こうも同じです。それに敵が圧倒的に優位に進めていた戦局を五分五分まで押し戻すのですから、それほど悪くない結果だと思います」
「最初に隠蔽しようとした大学側の初動がまずかったということだろう。その報いは我々も受けなければならないということだ」
 古垣内教授が大きな溜息をつきます。

「 ...... そして赤桶さんはもう大学には居られないでしょう。目面上君が彼女を愛しているのであれば、そのことが彼にとって何よりも大きな痛手になるはずです」
 小夜子さんは小さな声でそう言って目を伏せ、それを聞いた千明さんは両手で顔を覆って泣き出してしまいました。

 小夜子さんの作戦には隙がないように思えます。でも、こばとは何となく嫌な予感がしました。この駆け引きを成功させるための「何か」が不足しているような気がしたのです。

 ≫ 第26話「覚悟」
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 [ 2017/07/02 12:31 ]  こばとの大作戦! | TB(-) | コメント(0)
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