こばとの英語ノート

 言葉の妖精こばとの変てこな日常生活を英語を織り交ぜながら綴っています。こばと英語辞典も製作中。いつかは英語の総合サイトだって威張れるようになりたいな。何はともあれ、『こばとの英語ノート』をよろしくね!

英語で「目面上君の要求はとても厳しいものでした」

≪ 第23話「最悪の事態に備えましょう」

英語で「目面上君の要求はとても厳しいものでした」

 学食で夕食をとってから、また研究室に戻って対策を話し合っていると、1人のおじさんが疲れ果てた様子でふらふらとやって来ました。
「雛田谷(ひなたや)学長! どうなさったのですか!?」
 古垣内教授がそう叫んだので、この人が K 大の学長さんであることを知りました。
 雛田谷学長は手に持っていた1枚の紙を差し出します。
「今朝、目面上から届いたメールだよ」
 学長は古垣内教授に紙を手渡すと、空いていた椅子にどっかりと腰を下ろします。
「わざわざプリントアウトしなくても、メールで送っていただければ」
 武庫優美香さんがそう言うと、
「いや、私は古い世代の人間だから、こういう重要なものは紙にしておかないと、どうも落ち着かなくてね」
 学長は力なく笑います。

 Memogami made exacating demands.
 目面上君の要求はとても厳しいものでした。


 手渡された紙には次のような内容が書き連ねられていたのです。

 戦いは常にこちら側に有利に進んでいる。
 君たちには打つ手が何もない。
 なぜなら、君たちには「攻撃」という概念がないからだ。
 戦争を仕掛けられても「防御」することばかりに追われている。
 だから僕は何ひとつダメージを受ける心配がなく、自由自在に攻撃を繰り出せる。
 いつ攻撃するか、いつその手を止めるのか。
 いつ相手の譲歩を引き出すための交渉を行うのか。
 全てこちらに決定権がある。
 盾と矛が揃っていて初めて戦争ができる。
 盾だけでは絶対に勝てない。
 それは実際の戦争も、サイバー戦争も同じことだ。
 でもこれほど言ったところで、君たちは僕を仕留める手段を真剣に講じようとしないだろう。戦局が有利になったところで講和条件を出すことにする。

 [1] K 大学工学部に防衛技術学科を新設すること。
 [2] 新設学科ではサイバー防衛技術のみならず、
   IoT を視野に入れた軍事技術の研究を促進すること。
 [3] 『日本学術会議』に決別表明を送ること。

 まず1週間以内に、この講和を受諾する旨の誓約書を書面で送ること。
 そして1ヶ月以内に要求 [3] を履行し、3年以内に [1] と [2] を実現させること。講和を拒んだ場合は当然戦争は継続されるし、最終兵器を投入する用意がある。あと、阿縣研の皆さんはお疲れだろうから、アイスクリームの詰め合わせを贈っておいた。こちらが真剣に講和を考えていることのしるしと思って受け取ってほしい。

「きききい! いい気になりおってー、ですよー! 何がアイスクリームですかー! もう届いてるのかな? こばとも阿縣研に行ってアイスをもらってこようかな」
と、こんな軽口を言っても、皆さんとても笑う気にはなれないようです。
「こんな要求、呑めるわけない!」
 古垣内教授がいつになく強い口調で叫びます。
「[3] の『日本学術会議』てのが、よくわからないんだけど」
 路子さんが首を傾げると、小夜子さんが答えます。
「防衛省が推し進める『安全保障技術研究推進制度』てのがあるの。防衛技術に役立つ研究をしてくれるなら、潤沢な資金を提供してあげますよってこと。ところが大学側は猛反発して、その代表者たる『日本学術会議』は『戦争のための研究には協力しない」と表明し、各大学にも制度への応募を自粛するように求めているわ」
「自粛といっても事実上の圧力ねー。応募すると嫌がらせのメールが大量に届いたりするのねー」
 こばとは「やれやれ」と頭を振りました。

「でも、戦争するための研究なんて、私も反対です」
 千明さんがそう言います。
「『戦争のため』ていうフレーズは、"ああいう人たち" が使う常套文句ですよ! 我が国の防衛力を他国に対して相対的に強化すれば、それが抑止力となって、結果的に『戦争を防ぐ』ことになるのです!」
 こばとはむきになって、そう主張しました。
「なるほどなあ」
 茶之原が腕を組んで頷きます。
「そういう考え方に賛成できないな。お互いの国が相手より強い武器を持とうと競争を続ければ、軍拡が際限なくエスカレートする」
 別府込(べっぷこみ)助教授が反論します。
「それも一理あるよなあ」
 茶之原がまた頷きます。
「仮にそうであったとしても、軍拡をやめた側が押し潰されますよ! 軍事予算けちって、国がなくなったら元も子もないでしょ!」
「なるほど、元も子もないよなあ」
 茶之原がまた考えを変えたようです。

「でも!」
 優美香さんが何か言おうとしたところで、
「はいはい、そこまで。今は思想の違いで仲間割れしている場合じゃないよ。目面上君の思想の良し悪しはともかくとして、こういうやり方は絶対に許せない」
 路子さんが言い争いを鎮めます。
「それはそうねー、目面上君はもっとちがったやり方で、自分の考えを主張すべきでしたねー」
 こばとは、肩を落としてしょんぼりします。
「このパワーゲーム、私に任せてくれないかな?」
 国際政治学を専攻する小夜子さんは、自信ありげにそう告げたのです。

 ≫ 第25話「パワーゲーム!」
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 [ 2017/07/01 20:45 ]  こばとの大作戦! | TB(-) | コメント(0)
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