こばとの英語ノート

 言葉の妖精こばとの変てこな日常生活を英語を織り交ぜながら綴っています。こばと英語辞典も製作中。いつかは英語の総合サイトだって威張れるようになりたいな。何はともあれ、『こばとの英語ノート』をよろしくね!

目面上君は孤独な青年でした

 ≪ 第10話「書道家の息子さんです」

 本日の午前中に薩田千明(さった ちあき)さんが見知らぬ女性を1人連れて『あとりえこばと』を訪れました。その少し前から小夜子さんも来ています。作業室では折敷地清源君が仕事に打ち込んでいるので、邪魔になるといけないと思って、1階の応接間で詳しい調査報告を聞くことにしました。涼音さんが怖い顔して何かを言いたそうにしていましたけど、そんなことにかまっていられません。今日はこばとが残業を1時間延長するということで納得してもらいました。
「彼女は温泉サークルの後輩の赤桶暦(あかおけ こよみ)さん。工学部の情報科学科の修士課程1年。つまり目面上君と同学年だったの。彼女がいくつかの貴重な情報を提供してくれたわ」
「あ、いえ、情報というより、単なる噂みたいなものです。目面上(めもがみ)君って、ほとんど誰とも親しくしていなかったから、彼が何を考えていたかなんて、誰も知りませんし」
 赤桶さんは淡々とした様子でそう語りました。
「目面上君は友達が少なかったの?」
 小夜子さんが尋ねます。
「少なかったというより、皆無と言ったほうが正確かもしれません」

 He lived a solitary life at the university.
 目面上君は孤独なキャンパスライフを送っていたようです。


「え? いくら何でも、4年間もたった1人きりで過ごすなんてことないでしょ」
「そうですよ。小夜子さんだって友達少ないですけど、路子さんという親友がいましたからね」
 こばとがそう付け加えると小夜子さんは「余計なこと言わなくていい」と言って、こばとを睨みました。
「でも目面上君の場合、本当にそうなんです。いつも1人で何か考えごとしながら歩いてるし、お昼も学食で1人で食事していました。周囲からも相当な変人だと思われていましたね。でも成績は工学部トップクラスでした。並の院生たちよりずっと豊富な知識を持っていて、4年生になって研究室に配属されると、彼をやっかむ人も1人や2人ではなかったようですから。実際、阿縣研究室(応用情報科学研究室)の人が目面上君について話す時は、なんとなく負の感情を込める人が多かったんです」
「暦ちゃんは、阿縣研の隣の小角研(制御理論研究室)所属だから、多少なりとも目面上君の噂を聞く機会があったのよ」
 千明さんが言い添えます。
「それじゃあ、目面上君が他大学の院への進学を妨害されていたというのも、阿縣研の人たちから聞いたの?」
 小夜子さんが確認するように尋ねます。
「そうなんです。『阿縣教授に盾突いたら、あいつもおしまいだよなあ』みたいな感じで。こう言ってはなんですけど、目面上君の知識と才能は阿縣教授をもしのぐほどでしたから、彼が東大の院へ進むことを主張した時は、自分が軽んじられたような気持ちになったのかもしれません。でも目面上君の伝え方もよくなかったかもしれません。彼はあの通り、コミュニケーション能力に問題を抱えていましたから」
 赤桶さんはそこまで言ってから、コーヒーに口をつけます。『彼はあの通り』 ...... こばとは彼女のこの言い回しが妙に引っかかりました。まあ、それはとりあえず置いておくとして ......

「あともうひとつ、どうしても気になることがあるのねー」
「はい。何ですか?」
「『温泉サークル』って、どんなサークルなの?」
 こばとがそう尋ねると、3人とも目を丸くします。
「それって、今必要な情報かな!?」
 小夜子さんが咎めるように言います。
「だって気になるしー」
「あはは。関東周辺の秘湯を探して行ってみよう、というゆるい感じのサークルですよ。週末に活動しています」
 千明さんが笑いながら答えます。
「それは楽しそうなサークルですねー!」
「それじゃあ、こばとさんも特別会員にしてあげます」
 千明さんがそう言ってくれたので、
「ぜひぜひ! わーい! うれしいなー! この事件が解決したら、みんなで温泉に行きましょー!」
 こばとがはしゃいでいると、小夜子さんは呆れて頭を振りました。

 ≫ 第12話「仕事を完成させました!」
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 [ 2017/06/27 12:31 ]  こばとの大作戦! | TB(-) | コメント(0)
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