こばとの英語ノート

 言葉の妖精こばとの変てこな日常生活を英語を織り交ぜながら綴っています。こばと英語辞典も製作中。いつかは英語の総合サイトだって威張れるようになりたいな。何はともあれ、『こばとの英語ノート』をよろしくね!

折敷地清源君は書道家の息子さんです

 ≪ 第9話「綴じ糸が必要です」

 午後 5 時過ぎに長髪の少年がオフィスに現れたので、またまた涼音さんが仰天していました。
「 ...... 今度は男の子が来ました」
 涼音さんは何かを問いたげに、こばとのほうを見ます。
「あー、いいの、いいの。涼音さんは気にしないでお仕事続けてくださいなー。清源(せいげん)君、お久しぶりねー。ずいぶん大きくなりましたねー。
「 ...... 身長の話はやめてくれよ」
「んん? そういえば、思ったほど背が伸びてないのねー」
「 ...... 帰る」
 清源君はそのまま踵を返して帰ろうとしたので、
「わー! 待ってくださいなー! 今の発言は取り消しますよー!」
 こばとは慌てて清源君の顔の前で両手を広げます。
「とにかく清源君の力を貸してほしいのねー。バイト代をはずみますからー」
 そうやって必死に説得しようとしているのに、
「こばとさん! 中学生の子をバイトさせたらダメですよ!」
 焦った涼音さんがとんでもないことを口にしました。
「ひゃあああ! 涼音さん、清源君は高校2年生ですよー!」
「え!? 本当に!? ご、ごめんなさい!」
「俺、マジで帰るから!」
 清源君は本気で帰ろうとしています。
「とにかく謝りますからー。時給 2500 円出しますからー。今短気を起こすとどれだけ損をするか冷静になって考えてみましょー。世の中やっぱり損得ねー」
「 ...... また品のないことを」
 涼音さんが呆れたように呟いて頭を振ります。清源君はしばらく自分のプライドと葛藤しているようでしたが、「わかったよ」とつぶやいて足を止めます。
「 2500 円!? ケチなこばとさんが、そんなに出すなんて信じられないねー!」
 アシュリンさんがそんなことを叫びます。
「こばとはケチじゃないもん!」
 そう答えてから清源君を地下に案内します。

「おい、誰だよ、その中 ...... 」
 茶之原のやつが予想通りの言葉を発しようとしたので、
「黙れですよー! 高校 2 年生 の折敷地清源(おしきじ せいげん)君を紹介しますねー!」
 半ば強引に茶之原の言葉を遮断しました。
「あ、例の書道の上手な子ね?」
 優美香さんが訊きくので、こばとは本日の例文で答えましたよ。

 "He is a son of the master calligrapher, Kougen Oshikiji."
 「あの書道の大家、折敷地光巌先生の息子さんねー」


「また急に英語だよ」
 茶之原が肩を竦めます。
「よろしくね」
 武庫優美香さんが目を細めて挨拶します。
「よろしく」
 清源君はぶっきらぼうに答えます。それからまた優美香さんが作業を始めると、清源君はその少し後ろに立って、しばらくその様子を眺めてから、
「丁寧な字だけど、そんなスピードじゃ、いつ終わるかわからない」
 清源君は困惑したように言います。
「え? 遅いかな?」
 優美香さんが目をぱちくりさせます。
「書道展に出す作品を書くわけじゃないんだから、もっとてきぱきやらないと」
 清源君は席に着いて鞄から自分の道具を取り出します。それから古文書のコピーを1枚取って、それを手本に和紙に文字を書き連ねていきます。
「うわ! 速いな! しかも正確!」
 その筆運びの速さに茶之原も仰天します。
「すごい子ねえ」
 優美香さんが感嘆の声をあげます。

「この量なら、たぶん明日までには終わる」
 清源君はそう言いますけど ......
「でも清源君は学校あるし、遅くまでバイトさせるわけにもいかないから、今日と明日 2 時間ずつで合計 4 時間ぐらいしかありませんよ? さすがにそれでは無理でしょ」
「明日は学校さぼって朝からここで作業する。小遣い欲しいし、なんか最近学校つまんないしさ」
「だ、ダメですよー! そんなことさせたら、こばとが光巌先生に叱られますよー!」
「大丈夫だよ。親父は熊本の書道展に行ってるから、しばらく家にいないんだ」
「でもねー、ばれたら大変ねー。光巌先生、怒るとちょー怖いしねー」
「親父のことなんて知るかよ」
「おー。反抗期だな。俺にもあったよ、そういう時期」
 茶之原がまた、しょーもないことを言いながら、清源君の頭をぽんぽん叩きました。
「何すんだよ! 子供扱いするな!」
 清源君は茶之原の手を振り払います。
「な、なんだよ、俺は人生の先輩としてだなー」
「茶之原、いちいち余計なことするな、ですよー!」
 こいつがいると無用なトラブルが絶えない。こばとはそう確信しましたよ。
 結局のところ、背に腹は代えられず、清源君の希望に沿って、明日は午前中から来てもらうことになりました。
「俺も明日また朝から応援に来てやるよ」
 帰り際に茶之原が脳天気な口調でそんなことを言うので、
「来んでええわ!」
 こばとは反射的にそう答えました。

 ≫ 第11話「目面上君は孤独な青年でした」
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 [ 2017/06/26 20:15 ]  こばとの大作戦! | TB(-) | コメント(0)
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