こばとの英語ノート

 言葉の妖精こばとの変てこな日常生活を英語を織り交ぜながら綴っています。こばと英語辞典も製作中。いつかは英語の総合サイトだって威張れるようになりたいな。何はともあれ、『こばとの英語ノート』をよろしくね!

めもがみ?

≪ 第4話「重要なキーワードを手に入れましたよ!」

 今朝は 10 時に路子さんの運転する車に乗って、再び K 大学へ向かいます。
「みっちゃん、今日は運転までさせちゃってごめんね」
 小夜子さんが申し訳なさそうに言います。
「いいって、いいって。運転は嫌いじゃないし、W 大の卒業生が K 大に行く機会なんてあまりないことだしね。こういうのって結構刺激になるよ」
 路子さんは青信号を確認してアクセルを踏みながら答えます。
「ほんとにありがと! 今日は夕飯おごるから!」
「それに、そろそろ決着をつけないとね。五十木元教授はもう正気を失っているとしか思えない。自分を追放した大学、そのきっかけとなったさっちゃんへの逆恨み、そして学界復帰という達成不能な目標に対する異常な執着心。そういう負の感情だけで生きているような気がする」
 路子さんは、いつになく真剣な口調でそう言いました。
「私のせいなのかな。私がやり過ぎたのかな」
 小夜子さんも、いつになく弱気になって項垂れます。
「さっちゃんは何も間違ったことしてないよ。全部五十木さん本人が招いたことだしね。ただ、五十木さんの奥さんや娘さんたちは、本当に気の毒だと思う」
 路子さんは少し悲しそうな顔してハンドルを切りました。

 We found that Memogami is a last name.
 「めもがみ」は苗字のことでした。


 薩田千明(さった ちあき)さんが調べてくれたのです。学内の友人や所属しているロックバンドのメンバーなどに片っ端にメールを送ってみたところ「目面上君のこと?」という返信が届いたそうです。
「なるほど。目面上(めもがみ)ね。まさか人の名前とは思わなかったな」
 小夜子さんが応じます。
「珍しい苗字だもんね」
 路子さんが頷きます。
「ぜひ会ってみたいですねー。今、何年生ですかねー?」
 こばとがそう尋ねると、
「それがね、去年大学をやめちゃってるの。しかも4年生のとき」
 薩田さんが戸惑ったように答えます。
「4年生で!? 卒業を目前に退学したの!?」
 路子さんが驚いて訊き返します。
「まだ詳しい事はわからないんだけど、例の阿縣教授の応用情報科学研究室に居たらしいの。そこで何かトラブルがあったんじゃないかなあって思うんだけど。今日も復旧作業している阿縣教授の院生さんたちに詳しい事を訊こうとしても『知らない』の一点張りでね。それでもしつこく食い下がろうとすると『作業の邪魔だから』て追い出されちゃった。自分の研究室なのに」
 というわけで、大学の近くにあるカフェで(学内のカフェは日曜なのでお休みです)、こうしてこばとたちと話しているのです。
「これはきっと何かありますねー!」
「こばとちゃん、昨日の夕方、その院生さんは阿縣教授になんて言ってたのか憶えてる?」
 小夜子さんが尋ねます。
「ええとね、『このウイルス、やっぱり めもがみ の ... 』と言ってましたねー」
「目面上のウイルス?」
「目面上君の作ったウイルス、てことかな?」
 小夜子さんと路子さんが立て続けに薩田さんに問いかけます。
「さ、さあ、そこまではまだわからないけど」
 薩田さんが戸惑って首を傾げます。

 しばらくすると例の院生、茶之原がやって来ました。
「だめだ。研究室は情報科学の連中に乗っ取られてる。まあどのみち、研究データも書きかけの論文もないんだから、何もすることないんだけどね。はははは」
 茶之原は自棄になって笑い出しました。なんだか不気味でした。
「なんだ、また来たのか。暇な妖精だな」
 茶之原はこばとに対してそんなことを言います。
「きききい! 真剣に対策を考えているんですよー! 茶之原君も事態を打開するために少しは知恵を絞ってくださいなー!」
「だから素直に古文書を渡せばいいんだって」
「きききい! いちいち話が平行線になりますねー!」
「そんなに目くじら立てて、きいきいわめくなよ」
 茶之原は所在なさそうにスマホを取り出していじりだします。
 こんなのは放っておいて、話し合いを続けることにしました。
「その目面上君がウイルスを作ったとすると、目面上君は五十木と手を組んでサイバー攻撃を仕掛けてきたってことだよね。となると動機は大学への恨みってことかな?」
 小夜子さんは自身の推測を確認するように問います。
「よっぽどの恨みだよね。まずそのへんをきっちり調べないと。といっても、研究室のメンバー以外に何か取っ掛かりがないとね」
 薩田さんが途方にくれたように天井を見上げます。
「彼が悩んでいたとしたら、研究室以外の、誰か親しい友人に相談していたかもしれない」
 路子さんが提案します。
「そうね。在学中の目面上君の交友関係を調べてみようかな」
 薩田さんがそう言うと、
「そんな "探偵ごっこ" みたいなことしてないで、さっさと古文書渡そうぜ」
 茶之原はまたそんなことをぶつぶつこぼしていました。
 こいつだけは絶対に友達になれないと思いましたよ。

 ≫ 第6話「古文書を渡しましょう!」
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 [ 2017/06/25 13:31 ]  こばとの大作戦! | TB(-) | コメント(0)
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